客貨混載バス

▼宮崎交通(株)の客貨混載バス(村所停留所、2018年6月撮影)


近年、中山間地域を中心に路線バスで宅配便の荷物を運ぶ「客貨混載バス」が増えています。宮崎交通(株)の西都BC(バスセンター)〜杉安峡〜村所線約45kmでも、平成27年10月より、路線バスの座席の一部を撤去し荷台スペースを設けてヤマト運輸(株)の宅急便を運ぶ「ヒト・ものハコぶエコロジーバス」が運行されています。平成30年2月からはこれにさらに日本郵政(株)も参画し、郵便物等も同じバスで運ぶようになりました。

このような客貨混載バスが導入された要因は以下のとおりです。バス事業者にとって、過疎地域の路線バスは乗車人員の減少が続き空席が多く非効率な状況になっていました。そのため、バスの空きスペースを活用して新たな収益源が得られるならこれは歓迎すべき事案です。一方、トラック運送事業者にとっては、人手不足でトラックドライバーの確保が困難になっていました。そのため、既存路線バスの空きスペースを使って宅配便の拠点間輸送を代替できれば運行車の設定が不要となり長距離ドライバーが削減されます。このように、バス事業者およびトラック運送事業者の双方にメリットとなることから、客貨混載バスが導入されました。

さて、視察当日は残念ながら宅急便・郵便とも荷物がなく、実際の混載状況は見られませんでした。運転士さんによれば、年末は荷台がいっぱいになるが、それ以外は荷物の無い日も珍しくないとのこと。このため、一見すると客貨混載はうまく機能していないようにも見えますが、そうではありません。トラック運送事業者は、荷物がある日だけ当日車両とドライバーを手配するといったオペレーションはほぼ不可能のため、結局、荷物があってもなくても常に車両とドライバーを準備しなければなりません。したがって、輸送量が少なく毎日荷物があるとは限らない地方部においてこそ、客貨混載輸送は効果的と言えるでしょう。

半世紀以上前の国鉄では、輸送量の少ないローカル線で客車と貨車を1本の列車に連結した混合列車が走っていました。また、現在でもスイスやオーストリアで見られるポストバスは、もともと郵便輸送用の馬車に旅客も便乗させたのが始まりです。その意味で、客貨混合輸送もなんら特異な輸送システムというわけではないかもしれません。



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