武豊港駅の貨車用転車台

▼武豊港駅の貨車用転車台(2013年8月撮影)

昭和40年まで、旧国鉄(現JR東海)武豊線の終点武豊駅の約1km先に武豊港駅がありました。武豊港駅跡には珍しい貨車用の転車台が現在も保存されています。

通常、転車台は蒸気機関車のような前後非対称の鉄道車両を180度回転するために使う装置ですが、貨車は前後対象のため回転の必要はありません。本転車台は貨車をほぼ直角に移動するために、曲線線路の代わりとして設置されました。

明治34年、武豊港駅からライジングサン石油への引込線が整備されましたが、地形上の制約から半径65mの急曲線が挿入されました。その後、石油需要の増大から、従来の10トン貨車(タ600)に代わり20トン貨車(タサ1)が導入されました。20トン貨車は軌道への負荷を軽減するため従来の2軸から3軸になりましたが、ホイールベースが長く曲線走行抵抗の大きな3軸貨車は急曲線の引込線を通過できません。このために設置されたのが本転車台です。

製油所から出てきた20トン貨車は、1両ずつ人力で転車台に載せられて110度転回し、武豊港駅まで再び人力で押されて行きました。なお、転車台上の軌道が通常の1線ではなく直交する2線となっているのは、複数の貨車を連続的に転回するためと考えられます。

ところで、3軸貨車は上記のように曲線通過性能が劣ることから、わが国では昭和初期と戦時中の資源難の一時期を除いてほとんど生産されず、大型車は2軸ボギーに移行しました。旧武豊港駅転車台は3軸貨車に対応して整備されたものであり、その意味で、わが国の鉄道車両の歴史ではきわめて稀な3軸貨車のいわば生き証人として、産業史上の価値を有しています。(2017年4月)

▼昭和7年頃の武豊港駅構内配線図

*2つの転車台が見えますが、下のほうが本転車台です。2軸貨車用の曲線線路も併置されています。


注)図中のサイジングサン石油はライジングサン石油の誤り
出所)半田市鉄道資料館資料(許可を得て掲載)


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