欧州の鉄道事業者間競争

▼Westbahnの列車(2014年3月撮影)

近年、欧州で新しい鉄道事業者が誕生しています。例えば、オーストリアのWestbahn(ウィーン〜ザルツブルク)、ドイツのHamburg-Köln-Express(ハンブルク〜ケルン)などが新たに設立され、既存事業者(各国の旧国鉄を民営化した事業者。わが国のJRに相当)と競争を始めました。
これらの新規参入事業者は自ら線路を敷設したわけではなく、既存の線路・駅施設等のインフラを有償で借用し、車両と乗務員のみ自前で用意してサービスを開始しました。わが国では見られないビジネスモデルですが、例えば1本の高速道路上で複数のバス事業者が高速バスを運行している、あるいは同じ空港を複数の航空会社が利用しているのと同様の状況が、鉄道でも導入されたといえます。
このような同一インフラを使用した複数鉄道事業者間の競争は、EUの競争促進施策の結果として生まれました。すなわち、EUの共通運輸政策として、インフラの維持・管理主体と列車運行主体(鉄道オペレータ)を分離し(上下分離)、インフラについては公的管理の下に置いた上で、インフラを複数の鉄道オペレータに公平に使用させること(オープンアクセス)が、各国に求められています。
資本主義経済にあって、規制緩和による競争促進は事業者にコスト削減・サービス改善を促し、利用者利便の向上に適うスタンダードな経済政策です。しかし、欧州の鉄道事業の場合は、たんなる規制緩和にとどまらず、歴史的に自然独占のため競争が不可能と考えられていた鉄道事業を、無理やり(?)競争させるための制度改革を実施したという点で、EUの強い競争促進の姿勢を感じます。(2016年5月)

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