オランダの運河

▼アムステルダム郊外の運河(2014年9月撮影)

17世紀以降、鉄道の発展まで、英国をはじめ多くの欧州諸国では運河が主要な交通機関でした。現在でも、ライン・マイン・ドナウ運河など、幹線大量輸送では運河は依然として物流の大動脈ですが、地域輸送のための中小規模の運河は、効率の優れた鉄道そして後にはトラックに代替され、総じて運河輸送は衰退しました。そのなかで、オランダでは比較的中小規模の運河が現在でも貨物輸送に使用されています。国内貨物輸送に占める内陸水運(河川・湖沼・運河による水上輸送)のシェアはオランダでは38.7%(2012年、t・kmベース、以下同様)で、例えばドイツの12.3%、フランスの4.2%を大きく上回り、EU28カ国の中でもっとも高い数値を示しています。これはなぜでしょうか?

13世紀以降、オランダは干拓によって耕地を広げてきました。現在の国土面積の約2割が干拓によって整備されたものです。また干拓に伴う地盤沈下等から、国土の1/4は海面レベル以下の標高です。このため、雨水や地下水は自然排水されず、人為的に排水路を整備・維持しなければ土地は冠水してしまいます。そして、干拓地よりも水位の高い運河に排水を汲み上げる動力が風車でした。

結局、オランダの運河は交通インフラである以前に排水路といえます。そのため他国のように、鉄道が発達しても運河を埋め立てて道路に転用する等のことはできません。この結果、いずれにしても水路を維持しなければならないのであれば、トラック輸送よりも低コストでCO2排出量も少ない水上輸送を活用しようと考えるのは自然なことといえましょう。(2015年3月)



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