ヴェネチアのゴンドラ

▼ヴェネチアのゴンドラ(2007年9月撮影)

ヨハン・シュトラウス(1825-1899)のオペレッタ「ヴェネチアの一夜」、テノールのアリア「ゴンドラの歌」は「ホー・ァホー」という掛け声で始まります。ヴェネチアの情景を描写したものとされていますが、どこがヴェネチアらしいのか、現地を訪れるまでわかりませんでした。
ヴェネチアはヴェネタ潟Laguna Veneta上に築かれた水上都市で、市域中心部をS字型に大運河Canal Grandeが流れているほか100本以上の運河があり、総延長は約45kmに達します。このため、現在もシュトラウスの時代も、ヴェネチアの都市交通では船舶が大きな役割を果たしています。もっとも、運河延長は道路(歩道)延長に比べればはるかに短く、その意味ではヴェネチアの主要交通機関は「徒歩」と言うべきかもしれません。
とはいえ、旅客の大量輸送や貨物輸送では、船舶の重要性が高いことは事実です。今ではシュトラウスの時代とは異なり、基幹交通機関は水上バスVaporettoや大小のモーターボートなど動力の付いた船舶で、人力のゴンドラは観光タクシーのような位置づけです。
さて、運河にはいくつか交差点や三叉路があります。運河には直接、あるいは狭幅員の歩道を介して数階建ての建物が接しており、細い運河では船舶からの前方視界は制約され、交差点の見通しが効きません。さらに、ゴンドラは10mあまりの船体の最後尾に船頭さん(ゴンドリエーレGondoliere)が乗務するため、出会いがしらの衝突事故の危険が大きな交通システムといえます。このため、ゴンドリエーレは、交差点に進入する際、見えない他船に対して自船の存在を知らせるべく、「ホー・ホー」という独特の掛け声を発します。冒頭のシュトラウスのオペレッタの「ホー・ァホー」はこのことかと理解した次第です。
近年では運河の交差点に道路同様カーブミラーが設置され、「ホー・ホー」の重要性はいくぶん低下しましたが、これからもヴェネチアの「音の景観」であり続けることでしょう。(2014年7月)

Googleマップで運河と道路の状況が確認できます。

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