サービス産業、とくに交通・物流事業を研究対象とする研究室です。Transportation Economics & Logistics山本雄吾研究室Yugo YAMAMOTO's Website.
気仙沼の「BRT」
▼BRT用バス車両、気仙沼駅前(2013年12月撮影)
気仙沼の「BRT」を見てきました。東日本大震災で大きな被害を受けたJR東日本の気仙沼線および大船渡線(いずれも一部)の軌道敷を、バス専用道に転用したものをBRT(Bus Rapid Transit)と称しています。
本来、BRTとは、専用道(専用車線)を頻繁運転することで、バスであっても鉄道に近い輸送力と利便性を持たせた都市交通システムです。ブラジルのクリチバ市の例が有名ですが、わが国では名古屋市の基幹バスがこれに近いものといえます。そのため、気仙沼線や大船渡線、またこれに先立ち平成22年に「BRT」化された鹿島鉄道など、運行本数の少ない路線でバス専用道を整備することの効率性に疑問がありました(同時にこれらを「BRT」と称することにも違和感があります)。つまり、鉄道の輸送力が必要なら早期に鉄道として復旧すべきだし、もはや鉄道の輸送力が必要ないなら、単純に既存の一般道を走る代替バスで十分ではないかと、思っていました。
しかしながら、現地を訪れ「BRT」化の意義を理解しました。気仙沼線はJR(国鉄)路線のなかでは比較的新しく、最後の柳津〜本吉間が供用されたのは昭和52年でした。昭和40年代以降に整備された国鉄新線は、ローカル線であっても道路とは立体交差で曲線半径も大きく、明治期に整備された東海道本線などの幹線よりもハイスペックです。気仙沼線も、地形を無視して立派な高架橋とトンネルが一直線に連なっています。これに対して、並行する国道45号線は地形に沿ったアップダウンコースが続き、乗り心地が悪く時間も要します。このため、せっかく整備された高規格ルートを放棄するのは「もったいない」と多くの人々が感じるのはもっともなことです。
地元の方には当然でも、現場を見てみないとわからないことが交通の研究には多くあることを、あらためて実感した次第です。(2014年5月)
■カーブの多い国道45号線を緩やかな線形の気仙沼線が貫いています。
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